ドル安で買うべきは円かユーロか

これまで書いてきた通り、筆者の投資方針は日米の金融緩和余地の差を主な根拠としたドル円の空売りである。FRBのバランスシート再拡大政策や、米中対立の落ち着きぶりを鑑みて、2020年は各国の金融政策の差が市場のテーマとなると考えている。

2020年の市場のテーマは米中貿易か金融政策か

FRBは短期金融市場の資金不足を解消するため、昨年10月以降、短期国債を月600億ドルのペースで購入している。この措置は2020年の4〜6月頃まで継続される予定となっており、FRBのバランスシートは拡大中である。

日米の金融緩和余地が意識されれば、利下げも量的緩和も可能なドルが売られると考えている。逆に緩和余地が残っていない円は買われるはずである。

下落する円、上昇するユーロ

ところが、ドル円のチャートを見てみると円はむしろ売られているように見える。

ドル円を中長期で見れば緩やかに下落しているとも取れるが、少なくとも短期的には上昇している。昨年後半はFRBの資金供給と米中第一段階合意が重なり、リスクオンの値動きとなった。円の調達通貨として売られやすい側面のほうが強く出たのだろうか。

次にユーロドルのチャートを見てみる。

ユーロドルは長期的に下落傾向にあるが、こちらはFRBのバランスシート拡大と時を同じくして底打ちしているように見える。ドル円よりも筆者のイメージに近い値動きである。金融緩和余地の大きさという観点では、日<欧<米という評価が市場のコンセンサスとなっているように思うが、とにかく買われているのは円よりもユーロである。

米欧日の金利差

こうした円とユーロの動きの違いの原因は何だろうか。為替レートを見るときにまず考えるべきは各国の金利差である。

米国(青)、ドイツ(黒)、日本(赤)の長期金利を示してある。本来は実質金利で見るべきなのだが、データが用意できなかったため名目金利を用いている。9月以降のリスクオンムードで長期金利は世界的に上昇している。ドイツの長期金利の上げ幅は日本よりも大きいようだが、為替レートの値動きの差を全て説明できるほどではないように思える。

リスクオフで買われるユーロ

為替市場の最近の値動きの変化の一つとして、年始の米イラン対立の報道でリスクオフとなったとき、これまでなら安全資産として買われやすかったドルは買われなかった。長期にわたって欧州の金利が低位に抑えられた結果、最近ではユーロも調達通貨として利用されやすくなっていることが原因の一つと考えられている。円やユーロで調達されて米国のリスク資産に投じられる資金の量が増えているため、リスクオフでドルが売られるということである。

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How the euro has become ‘the world’s new carry trade’

裏を返せば現在の株高基調が続く限り、ドル高は維持されやすいということでもある。

まとめ

FRBのパウエル議長はレポ市場救済のための短期国債買い入れ措置について、「これは量的緩和ではなく一時的な措置である」と主張していた。年末の資金逼迫懸念も過ぎ去り、短期金融市場へ資金供給を続ける理由はなくなりつつある。短期国債買い入れ措置の期限の目安は4-6月としているから、量的緩和ではないとの主張を変えないのならばそこで買い入れは停止しなければならないだろう。

FRBのバランスシート縮小政策が2018年の株式市場の下落の引き金となったことを思い出せば、一度始めてしまった緩和政策を停止するのには大きなリスクが伴う。株価下落を受けて政策を緩和方向へ転換させたパウエル議長はそのことを強く認識しているはずである。

FRBが何かしらの理由をつけてバランスシート拡大方針を維持するならば、これまで通りにドル安トレンドを見込んでいいだろう。一方でレポ市場の安定を理由に資金供給を予定通りに停止させるようならば、株式市場に動揺が広がる可能性がある。リスクオフでドル安になりやすくなっているならば、ドル安にかけるリスクは小さい。

そのときにドルに対して買うべきなのは円なのかユーロなのか。個人的にはやはり円だと考えているが、実際に買われているのはユーロである。筆者が見落としている何かがあるのかもしれないが、とにかくそうなっているのだからユーロを買うべきかもしれない。