中央銀行の金融政策ツール

昨年9月のレポ金利急騰を受けて、米国の中央銀行であるFRBは月額約600億ドルの財務省証券の買い入れを行なっており、筆者はこれが現在の株高の主要因であると考えている。

政治問題や景気サイクルよりも見るべきは流動性

2020年の市場のテーマは米中貿易か金融政策か

レポ市場そのものについてはWSJの記事に簡潔にまとまっている。

中央銀行の金融政策が金融市場に与える影響を理解するためには、金融政策とは具体的にどのようなものであるのかを知っておかなければならないだろう。「利下げ」や「量的緩和」という言葉はニュースにもよく登場するが、金融政策全体に関する情報はそれほど多くない。ここでは米国のFed(連邦準備制度)の金融政策について説明する。

Fedの金融政策ツールは主に3つある。

  1. 公開市場操作(Open Market Operations)
  2. ディスカウントレート(discount rate)
  3. 預金準備率(reserve requirements)

公開市場操作

金融政策ツールの中で最重要なのがこの公開市場操作である。公開市場操作を平たく言えば、中央銀行が市中の銀行との間で有価証券(国債等)を売買することで金融システム内の流動性をコントロールする行為である。

中央銀行が金融引き締めを行いたい場合、中央銀行は保有する国債を市中銀行へ売却する。国債を買い取った分だけ市中銀行の準備預金は減少し、金融システムから流動性が引き上げられたことになる。金融緩和の場合はこれの逆であり、中央銀行は市中銀行から国債を買い取り、その分だけ国債を売った銀行の準備預金を増加させる。

公開市場操作の目的は政策金利をコントロールすることである。米国の場合は銀行同士の資金調達金利であるFF金利(federal funds rate)が例えば1.50〜1.75%になるように、公開市場操作を通じて金融システム内の流動性を操作するわけである。このときに目指す政策金利水準を変更するのがいわゆる利上げや利下げである。

レポ金利はFF金利とは別のものであるが、どちらも短期金融市場の金利であり本来であれば似た動きをする。ところが昨年9月にレポ金利が2.25%から10%に急騰してしまったので、Fedは公開市場操作(月額600億ドルの短期国債の買い入れ)に乗り出し、短期金融市場への資金供給を始めたのである。

以上のように公開市場操作の基本的なターゲットは政策金利の水準だが、政策金利が0に到達してしまいそれ以上の利下げができないなど、状況によってはマネーサプライ(実体経済中の資金量)をターゲットとすることもある。中央銀行はマネーサプライを直接操作できないので、この場合は金融システムに供給する資金の量を決めて、市中銀行から証券の買い入れを行う。これがいわゆる量的緩和政策である。

ディスカウントレート

Fedの金融政策ツールの2つめがディスカウントレートである。信用収縮などの理由で自力での資金調達が難しくなった場合、金融機関はFRBから直接、お金を借りることができる。中央銀行が「最後の貸し手」と呼ばれる所以である。このときに適用される金利がディスカウントレートであり、通常はFF金利より高く設定されている。

2007-2008年の金融危機の間、金融機関の連鎖的破綻によって金融システムが信用収縮スパイラルに陥るのを防ぐためにFedはディスカウントレートを引き下げることで対応した。

預金準備率

3つ目のツールが預金準備率である。米国を含む多くの国には準備預金制度が存在し、金融機関が顧客による預金の一定割合を中央銀行に準備預金として預け入れることを義務付けている。預金に対して求められる準備預金の割合のことを預金準備率という。

銀行の信用創造に関するよくある誤解だが、準備預金とは銀行による貸し付けの原資ではなく、銀行間送金のための手段である。銀行は預金者から直接受け取った預金(本源的預金)の額に依らず好きなだけ貸し付けを行なうことができるが、その際、貸し付けによるマネーサプライの増加が急激なインフレを招く恐れがある。

そこで銀行による貸し付け行為に制限をかけるのが預金準備制度である。中央銀行が預金準備率を引き上げればマネーサプライの減少が期待され、引き下げればマネーサプライの増加が期待される。

まとめ

以上のように金融政策には様々な手段が存在し、本記事では米国の主要な金融政策について説明した。細かな差異や名称の違いはあれ、他の国にも同じような仕組みが存在する。金融政策を通じて中央銀行が市場に与える影響は極めて大きいのであり、投資家はニュースなどで報じられる政策変更の意味について正しく理解できなければならないだろう。