2020年の市場のテーマは米中貿易か金融政策か

年明け早々に金融市場では不穏な動きが見られている。

中国の中央銀行である中国人民銀行が1日、預金準備率を0.5%引き下げることを発表した。

PBOC Sets Policy Pace for 2020 With Reserve Cut to Aid Credit

株式市場はこれを好感し、2020年は世界的な株高基調でスタートした。以下に示すのは米国のS&P500指数のチャートだが、中国や欧州市場でも株価は上昇してスタートしている。

しかし、金融市場ではもう一つの特長的な値動きが起きている。それは金価格と円の上昇である。

金価格のチャートを見ればより分かりやすいが、昨年11月以降の株式市場の上昇の間、金と円は値を下げていた。この期間は米中の第一段階合意のニュースが株価を押し上げていた時期であり、リスクオンムードの中で金や円が売られたということだろう。

ところが12月の終わり頃から金価格は急上昇を始めた。メディアでは2020年の世界経済に対して前向きな論調が目立っているように感じるし、米国の主要株式指数は史上最高値を更新し続けているにもかかわらずである。そうしている間に、ドル円も下落し始めているように見える。

ここで頭に浮かぶのは、市場のテーマが米中貿易から金融政策に移りつつあるという仮説である。株価上昇の理由が米中合意による経済成長見込みから金融緩和に変わったのであれば、株高とゴールド高の両立は説明できる。FRBのレポ市場救済策が量的緩和政策に近づいている可能性については前回の記事で述べた。

Fedがレポ市場への資金供給拡充、ドル安は起きるか

次に米国の長期金利の推移を見ると、1.9%程度まで上昇した後、停滞している。

市場が金融政策、特にFRBの金融緩和を織り込もうとするなら長期金利は低下してもよいはずである。今のところ債券市場は仮説を支持していないということだろうか。

一方で、インフレ連動債のほうには値上がりの予兆がある。

インフレ連動債の価格上昇は実質金利の低下を意味する。このまま名目の長期金利は下がらずに、実質金利だけが低下していくのであれば、それは期待インフレ率の上昇を伴うことになる。実体経済への強気と金融緩和を同時に織り込もうとすればそうなるのかもしれないが、債券市場については現時点では判断できない。

以上のように、筆者は市場のテーマが米中貿易から中央銀行の金融政策に変わってきている可能性を考えている。その場合、投資家が賭けるべきトレンドは株高よりもドル安であるという考えは変わっていない。米欧日で有効な金融緩和余地を残しているのは米国だけであるという明らかな事実がいつ市場に認識されるのか、その予兆を探しながら注目している。