政治問題や景気サイクルよりも見るべきは流動性

米国の主要株式指数が史上最高値圏での推移を続けているが、現在の金融市場が置かれている状況を改めて整理しておきたい。

直近の資金の流れのターニングポイントとなったのは、9月の始めごろ。以下の記事で取り上げたように、米中協議、英国のEU離脱、香港デモなどの政治問題でポジティブな報道が重なった時期である。

貿易協議と金融緩和、一時的な株高にはできても

このタイミングで米国の長期金利は底打ちし、先進国の主要株式指数は上昇を再開した。以下に示すのは、米国の長期金利とS&P500指数のチャートである。債券市場から株式市場へ資金が移動しており、いわゆるリスクオンの値動きである。

まずはっきりさせておきたいことに、このリスクオンの理由は主要メディアが報じるような経済のファンダメンタルズ改善期待ではない。政治問題の解決によって本当に世界経済の需要が回復するのであれば、あるいは投資家が経済の先行きに前向きなのであれば、原油価格や銅価格は上昇しなければならないはずである。しかし、実際にはどちらも停滞したままである。

貿易戦争の解決によって世界に経済成長が戻ってくるなどと本気で信じている投資家はいないということである。ではリスクオンの本当の理由は何かといえば、それはFRBによる市場への流動性供給である。9/17に米国レポ市場の金利が急騰したことを受けてFRBは緊急の資金供給措置を実施、その後、継続的な国債買い入れを行なっていくことが決定された。

FRB、月600億ドルの財務省証券購入15日に開始 来年第2四半期まで

その結果、縮小し続けていたFRBのバランスシート規模は再び拡大し始めた。現在の株高の理由は明らかにこれである。

ではFRBが資金を供給し続ける限り、株式市場は今後も最高値を更新し続けるのだろうか。筆者はそう思っていない。まず確認したいのは、リスクオンとはいっても主要株式指数以外のリスク資産に資金は流入していない。以下に示すのは米国のハイイールド債と上海総合指数のチャートである。

どちらも全く上昇していない。リスク資産の中にも相対的なリスク度合いの高さがあり、これらはS&P500に含まれるような米国の大型株よりもリスク度合いが高い。米国債や金から米国の大型株への資金移動は起こったかもしれないが、そこから先のリスク資産への資金流入はない。つまり、限定的なリスクオン相場ということである。

こうした状況がいつまで続くかを見極めるのは難しい。一つの目安として、昨年10月の世界同時株安の直前と現在との比較で見れば、重要な違いが2つある。一つはFRBが市場から流動性を吸い上げていた昨年と異なり、現在は流動性が供給されていること。もう一つは長期金利の水準が昨年は3.2%台まで上昇していたのに対し、現在は1.7%台であること。したがって、今の市場環境では株式市場の急落は(昨年に比べれば)起こりにくいだろう。

株式市場の上昇の理由がFRBによる流動性供給であるなら、先行きを決めるのも流動性である。流動性の供給量が十分なのであれば、長期金利は低位にとどまり、株価も堅調に推移するだろう。一方で流動性が不足しているならば、株価を支えるために債券市場の資金が奪われていき、長期金利の上昇はどこかで株価の下落を引き起こすことになる。