米中の第一段階合意はいつなのか、金融市場への影響は?

金融市場の最大の関心ごとである米中の通商協議の様子が変わってきた。中国側が交渉のペースを握っており、徐々に強気の姿勢を見せ始めている。

米中の「第一段階の合意」はもともと11月のAPEC会合での署名が目標とされていたが、開催国チリの国内事情によって取りやめとなった。続いて、12月15日に米国が対中追加関税の発動を予定していることから、12月前半での署名がメインシナリオとなっていた。それが来年に持ち越される可能性が出てきている。きっかけは、第一段階合意の内容について中国側が、米国による対中関税の少なくとも一部の撤廃を要求し始めたことである。

10月の協議の時点における第一段階合意の主な内容としては、中国側が米国から農産品の大規模購入を行い、米国側は対中関税引き上げを見送るというものだった。知的財産権や技術移転などのより核心的な問題の解決については第二段階または第三段階での合意を目指すという説明だった。

ところが中国側が発動済み対中関税の撤廃を求めたことで、米国側も知的財産権や技術移転の問題を第一段階合意に含めることを求める方向に動き始めている。そうなってくると、もはや第一段階というより本格的な合意であり、状況は10月以前に逆戻りしていることになる。

中国側は米感謝祭前に対面での通商協議の開催を提案しているとされ、これは見方によってはクリスマス商戦を人質に取り、米国側に協議進展を余儀なくさせる狙いがあるのではないか。つまり合意内容は中国側に有利なものになる可能性が高い。

中国主席、米との「第1段階」通商合意とりまとめに意欲

最近の金融市場は比較的落ち着いた値動きとなっており、米中協議の雰囲気が変わってきたことに対して大きな反応は今のところ見られない。米国のS&P500指数は最高値付近での推移を続けており、日々の値動きは小さい。

市場のボラティリティが小さくなっていることは、VIX指数がしばらく低位にとどまっていることからも明らかである。株価の大きな変動を心配する投資家は減っているのである。

では米中協議の行方は現在の市場にどう影響するだろうか。まず、中国側の一部関税撤廃という要求を米国側が拒否した場合、株価は大きな調整局面を迎える可能性がある。市場参加者が米中協議の進展について油断しているほど、下落幅は大きくなるだろう。しかしこの場合、米中合意という市場にとっての最大のポジティブ要素は温存されたことになり、株価はどこかで下げ止まり、再び現在の水準に戻ってくるだろう。

次に、米国経済にとって重要なクリスマス商戦を鑑み、米国が許容可能な範囲の譲歩と共に合意を優先した場合はどうだろうか。市場は貿易戦争の解決を織り込もうとし、株価はさらに押し上げられるだろう。一方で、あと数週間の間に全ての問題についての完全合意がなされることはあり得ず、結局残りの問題は来年以降に持ち越されるだろう。市場がその事実を認識すれば、株価は一旦のピークをつけ、そこから緩やかに低下し始めるだろう。

最後に、第一段階の合意そのものが来年に持ち越された場合はどうだろうか。多少の期待剥落はあるかもしれないが、株価は上げも下げもせず低ボラティリティな環境が維持されるだろう。

以上が現時点での筆者の相場観である。1.交渉決裂なら株価は(最終的なものではないが)大きめの調整局面を迎え、2.米国の譲歩なら主要株価指数は最高値を更新した後、そこから緩やかな下落、3.合意持ち越しなら現在の株価水準と低ボラティリティ環境の継続。クリスマス商戦だけでなく、来年の大統領選まで視野に入るこの時期の交渉決裂は考えづらく、現実的には米国による少しの譲歩と協議継続という2と3の間のような展開をイメージしている。その場合にやることは、形の上での譲歩と合意を貿易戦争の終結であると市場が誤認したときに、持ち上げられた株式指数を空売りすることくらいである。