貿易協議と金融緩和、一時的な株高にはできても

ここ数週間で市場にポジティブな出来事が続き、株式市場は上昇基調にあるが、この値動きは妥当だろうか。

  • 米中の貿易協議再開
  • 英国のEU離脱延期法案の成立
  • 香港の逃亡犯条例改正案の撤廃
  • ECBの量的緩和再開

これらのニュースを受けて、米国の主要株式指数S&P500は史上最高値付近まで上昇している。市場の緊張感はだいぶ和らいだようだ。

株価がネガティブニュースで下落し、その撤回で下落前を超えて上昇していくという動きが続いている。米中の通商問題などはトランプ大統領が人工的に作り出したネガティブ要因であり、彼は株価を見ながらそれを出し入れすることで市場をコントロールしているようにみえる。株価が高値圏を維持しているのだから、今のところはうまくいっているのだろう。

米国株の上昇と合わせて確認すべきなのが米長期金利の反騰である。昨年末から一貫して下落傾向にあった長期金利が急騰している。

ECBの量的緩和再開にもかかわらずである。ドイツ国債の金利低下->米国債の金利低下というチャネルは機能しなかった。というより、ドイツ国債の金利も同じように上昇している。債券市場の投資家はやや悲観的になりすぎていたのだろうか、それとも量的緩和にはもう市場を支える力が残っていないのか。

市場にとって最も重要な要因である米国の金融政策の行方はまだはっきりしていない。最近のセンチメント改善で市場による利下げ折り込み具合は若干後退したようである。記事執筆時点で米国の政策金利は市場に以下のように予想されている。

125-150bp150-175bp175-200bp200-225bp(現在)
9/18/20190.0%84.2%15.8%
10/30/20190.0%34.2%56.4%9.4%
12/11/201914.1%43.4%37.0%5.5%

9月会合で25bpの利下げが行われ、年末までにもう一度の利下げがあるかどうかといったところだろうか。パウエル議長には今後の会合で利下げをしない選択肢が与えられたことになる。ところで、トランプ大統領がこのタイミングで米中間の緊張を和らげた理由はなんだろうか。思いのままにならない金融政策側の緩和余地を吐き出させきるまでは、株価を軟調にさせておいたほうが良さそうに思えるのだが。

最後に日経平均のチャートを掲載しておく。こちらも上昇中であり、昨年の急落前に雰囲気が似てきている。

米国の主要株式指数だけを見れば確かに株価は最高値付近であるが、強気相場はおそらくもうだいぶ前にピークを打っている。中国やドイツからは景気後退のシグナルが届いており、米国経済へ順番が回ってくるまであとどれくらいの時間が残されているだろうか。トランプ大統領はFRBの利下げを待たずに米中協議の再開を決め、市場は反応した。だがこれは本来存在しなかった問題をもとに戻しているだけであることを忘れてはいけない。

世界経済のファンダメンタルズが明らかに悪い方へ推移する中でFRBの金融緩和に期待が集まっているが、ECBの量的緩和再開に対する市場の反応は将来への不安を残す結果となったのではないか。FRBには2%程度の利下げ余地と量的緩和の再開という武器が残されているが、これらが景気後退や株価下落を支えるのに十分である見込みは薄い。そう考える人が増えるほど状況はますます厳しくなる。