罰されない史上最高値

米国の主要株式指数であるS&P500指数が史上最高値を更新した。次回のFOMC会合で25bpの利下げがほぼ100%で織り込まれていることを踏まえると、やはり異常な状況と言わざるをえない。

世界中で長期金利が低下する中で、利回りを求める投資家は株式市場だけでなくハイイールド債や新興国国債にも資金を移しているようだ。

個々の資産クラスの事情によらず、中央銀行による金融緩和を前提としてリスク資産がまとめて上昇している、そういった印象を受ける。市場はFRBの利下げペースについては様々な考えを巡らせているが、金融政策が緩和方向へ進んでいくこと自体を疑ってはいない。そしてそれはおそらく正しい。

FRBが中央銀行を軽視して過度な緩和を求める投資家を罰するにはとっくに手遅れなのである。実体経済が景気拡大の最終盤にあると見られる中で、過剰に膨らんだ金融市場に少しでもショックを与えればどうなるか。最近のパウエル議長の姿勢はまるで腫れ物に触るようである。罰されることがないと気づき始めた投資家がリスク資産を買い上げることを躊躇しなくなっている可能性がある。

一方でFRBの緩和姿勢にもかかわらず現時点ではそれほどドル安になっていない。

しかしそれは他の通貨に対しての話であり、ドル建て金価格は高値圏での推移を続けている。

目先の利下げ観測が上昇要因であることは間違いないが、それだけではないだろう。民間債務・公的債務ともに過去最高レベルにある状況で世界経済が景気後退に陥れば、世界の中央銀行は強引にでも長期金利を押さえ込みにかかる。つまり量的緩和の再開である。行き着く先は既存通貨に対する不信任であり、今の金価格の上昇はそういったシナリオを織り込み始めているのではないだろうか。

この先、米国経済の減速傾向が明らかになるにつれてトランプ大統領はその原因を①FRBのせいにして利下げを求め、②他国のせいにして貿易戦争を加熱させる。株価に対する景気減速と②の悪影響を①で相殺できればいいが、そううまくいくだろうか。

リスク資産の更なる上昇に賭けるよりは、リスクオフや金利低下局面で買われるものを狙うほうがいいだろう。そして、短期的にFRBの利下げがどの程度のペースで進むかを気にするよりも、より確度の高まった金融緩和の常態化という中長期的なシナリオにかけるほうがいいだろう。ドル円の空売りや、ゴールドの買いはかなり手堅いトレードになりそうだ。