露骨な催促相場、パウエル議長は手詰まりか

来週18日,19日のFOMC会合を控えて、最初の利下げがいつになるかが大きな関心を集めているが、もはやパウエル議長に選択の余地は残されていないだろう。

昨年後半までFRBは金融引締め路線を続けていたが、年末の株安を受けて大幅な路線変更へ踏み切り、利上げの一時停止とバランスシート縮小政策の9月末での終了を表明した。この時点で決まったことは金融引き締めの撤回であり、今後の方針についてはしばらく様子見をするということになっていた。それがなぜ利下げを前提として、そのタイミングを議論する状況になっているのか。変わったのは実体経済の側ではなく、金融市場である。

昨年末の株式市場の下落がFRBに金融引締め路線を諦めさせたあとも、長期金利の下落は続いている。これが利上げの停止では不十分で利下げが必要であるという、債券市場の投資家から中央銀行へのメッセージである。

S&P500指数は最高値を更新した後、米中貿易摩擦の悪化を理由として一時調整したが、下落率は小幅にとどまり、今月に入ってから値を戻している。昨年は長期金利が上昇する中での株安、今回は長期金利が下落する中での株安であるから、このような動きになるのだろう。それに加えて、株式市場の投資家のほうが景気の先行きに関して楽観的であるのかもしれない。

現時点での金利先物市場による利下げの織り込みは以下のようになっている。一度の利下げ幅を25bpとすれば、7月までに1回、年末までに2,3回の利下げがメインシナリオとなっている。

6/19 7/31 12/11
225-250bp (現在) 76.7% 12.5% 1.0%
200-225bp 23.3% 68.0% 9.9%
175-200bp 19.5% 31.1%
150-175bp 37.6%
125-150bp 17.7%
100-125bp 2.7%

このような状況でパウエル議長は利下げに踏み切るのか、それとも様子見姿勢を続けるのか。もしも様子見姿勢を継続すれば、期待を裏切られた金融市場では長期金利が一旦上昇し、株価が下落を再開する可能性が高い。株安となれば政治的圧力も強まることになる。だからどちらにしても、遅かれ早かれ利下げに追い込まれるのだろう。

昨年末から今年にかけて、FRBは実体経済ではなく明らかに株式市場の下落を理由として金融政策を緩和側に方向転換させた。その後も各種経済指標は強弱入り混じっているが全般的に堅調であり、インフレ率や失業率に目立った変化がない中で、今度は利下げに踏み切ろうとしている。米中貿易摩擦や欧州経済の減速、英国政治やイラン問題などの不透明感を理由とした「予防的利下げ」とは言うが、中央銀行が金融市場に従っているだけに思えてならない。ただでさえ心許ない利下げ幅を予防に使うことは果たして正しいのか。

市場が中央銀行への政策期待を強めれば、それを裏切ったときのショックが大きくなるため配慮せざるを得ず、そうした姿勢によって催促の度合いが更に強まる。株安を理由に金融緩和へ舵を切った時点で、このスパイラルが始まってしまったとすれば、もはやパウエル議長は金融政策の自由度を失っているのではないか。この見立てが正しければ金融引締めの再開はあり得ず、FRBは金融緩和へ一直線ということになる。