米中関係の悪化は深刻な株安を引き起こさない

5月5日にトランプ大統領が中国からの輸入品2000億ドル相当に対する10%の関税率を25%へ引き上げると宣言した。米中の通商問題は収束に向かっているとの見方が広がっていた中での突然の発表に、金融市場ではリスクオフの動きが強まった。各市場のその後の動きを見ながら、今後の動向について整理する。

株式市場の動きを見てみると、米国のS&P500指数はすでに下げ止まっている。下落幅も昨年後半のものに比べると大したものではない。

一方で中国の上海総合指数は年初からの急上昇の反動もあるだろうが、下げ方がきつくなっている。

為替市場の動きはより明白である。ドル高中国元安の方向に大きな動きが出ている。

中国側も報復措置として、米国からの600億ドル相当の輸入品への関税率を最大25%まで引き上げることを発表したが、今のところ市場は米国が一方的に中国を締め上げているという評価をしているようだ。高まる関税やHuawei排除措置がサプライチェーンの混乱を招き、世界経済に負の影響を与えることが懸念されている。では米中関係の悪化がさらなる株安を招くかというと、そうはならないだろう。

そもそもトランプ大統領にとって中国との通商問題とは、あくまで再選に向けた支持者へのアピールでしかない。米中摩擦をエスカレートさせた結果、金融市場が動揺して自慢の株価が急落してしまえば意味がない。実際に、追加関税の発表受けて株価の下落が続いていた14日、トランプ大統領は中国との問題は「ささいな口げんかだ」との認識を示し、市場にメッセージを送っている。株価はその日を境に下げ止まっており、株式市場もトランプ大統領の意図を理解している。

株式市場に比べて債券市場は事態をもう少し重く受け止めているようだ。米国の長期金利は2.3%台まで下がってしまった。リスクオフの局面でのこうした動きは「質への逃避」として説明されるが、それにしても下がり過ぎの印象を受ける。

例えば、現在の長期金利の下落は期待インフレ率ではなく実質金利の下落が主要因であるようだが、本来は実質金利と逆相関にあるゴールドの価格は伸び悩んでいる。

また、投機性の極めて高い市場であるビットコイン価格はこれといった理由もなく急騰している。

これら以外にも全体の雰囲気を感じ取れば、米中の通商問題は以前ほど市場に大きな影響を与える要因ではなくなりつつあるように感じる。したがって米国債市場のほうが長期金利上昇の方向に修正されるのではないかと見ているが、どうなるだろうか。仮に株式市場のほうが間違っていて株価がもう一段下落しても、トランプ大統領は対中姿勢を緩めることができるだろうし、FRBも利下げについて言及するなどの対応がとれるはずだ。やはり大事にはならないだろう。

本当の株安が起きるのは長期金利が再び上昇した後だと思っている。リスクオフが収まって長期金利が上昇する流れになれば、株式投資家が長期金利の上昇を無視している期間、ゴールドを安く買う機会が巡ってくるかもしれない。今はそれを待っている。

予想に反して株価がこのままずるずると高値を切り下げていく場合は、FRBの姿勢が金融緩和に傾いていくのに合わせてドル円が下落していくだろう。日米の金融緩和余地の差というのは多くの投資家が着目しているポイントであり、現在はドル高だがドル円で見れば既に円高になっている。