弱い米雇用統計とECBの長期オペ開始、強まる景気減速懸念が株式市場の急落を防ぐ

2月の米雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数は前月比2万人増となり、市場予想の18万人増を大きく下回った。世界経済の減速傾向が懸念される中で、一人勝ち状態になりつつあった米国経済の行き先が不安視される結果となった。

米国の就業者数の伸びは1月の31万1000人、昨年12月の22万7000人と力強く推移してきたため、今回の結果はその反動であるとの解釈もできる。労働参加率は63.2%と高水準を維持しており、失業率は3.8%と歴史的低水準にある。賃金の伸びが前年同月比3.4%と約10年ぶりの高水準となったことも踏まえれば、労働市場にはスラックがそれほど残っていないというサインとも受け取れる。その場合、労働市場の引き締まりが賃金の上昇を通じてインフレ率を上昇させる可能性もある。

金融市場はどう反応したのかというと、米国の長期金利と株価は共に下落した。

つまり、市場は今回の雇用統計結果を景気減速のシグナルとして捉えている。労働市場の引き締まりによって就業者数の伸びが弱まったと考えるなら、長期金利にはどちらかと言えば上昇圧力となるはずである。

では、中国やドイツに続いて米国経済も減速傾向が強まっていくのか。それはまだわからない。一つ言えることは、もし景気減速への確信が強まったとしても、金融市場がパニック的な下落を見せることはないだろうということである。

昨年10月の株価急落が開始した頃、株価は今より高いところにあり、投資家は今より強気だった。米国の長期金利は3.2%近辺まで上昇していたが、今は2.6%台である。FRBは利上げを停止し、バランスシート縮小政策の終了を表明した。

さらに今週、ECBは新たな長期リファイナンスオペ(LTRO)を開始することと、少なくとも2019年末まで政策金利を現行水準に据え置くことを発表した。これを受けてドイツ国債の金利がさらに低下したため、米国の長期金利にも中長期的な下落圧力がかかる。

だから米国の株式市場がここから急落することはないだろう。おそらく短期的にはまだ幾分かの上昇余地がある。だがそれでも昨年10月の高値を超えることはできない。そうして上下動を繰り返しながら、市場参加者がそれと認識しないうちに緩やかに下落トレンド入りするだろう。