悪いニュースは良いニュース、市場の力強い上昇に見る危うさ

世界経済の減速懸念が膨らむ中で、米国株式市場は上昇を続けている。

年明けからほぼ一本調子で上げ続けており、この上昇を支えているロジックは米国の金融引締めが終了し、世界の金融環境が緩和的なものに戻るというものである。その結果、経済にとって悪いニュースが金融緩和を期待させ、逆にリスク資産の上昇につながるということが起きている。

その一方で、安全資産である金価格も早いペースで上昇している。

リスク資産と安全資産が共に上昇しているということは、つまりこれは金融緩和相場なのである。2008年の金融危機の後、世界的な金融緩和が実施された期間の値動きと仕組みは同じである。ただし、今回はリスク資産がすでに歴史的な高値圏にあり、先進国の緩和余地は当時と比べて極めて小さい。

欧州各国で景気減速の兆候が現れたことで、FRBに続き、ECBも態度をハト化させている。イタリアは2018年第4四半期が前期に続いてマイナス成長となり、リセッション入りした。ドイツも同四半期のGDPの前期比伸び率が0%となり、テクニカルなリセッション入りは回避したものの、景気減速の感を強めている。

トランプ政権は通商合意が達成されなければEUからの自動車輸入に関税を課す考えを示しており、これが実行されればEU経済の中心であるドイツ経済にとって致命的なダメージとなる。EUとしては自動車関税を受け入れることはできないため、通商問題のその他の分野で米国が満足するだけの譲歩を示さざるを得ないだろう。米中の通商問題が一旦の落ち着きを見せるにつれて、EUが次のターゲットになりつつある。

21日にはECBの1月の議事要旨が公開され、理事会がユーロ圏経済の先行きを悲観的に捉えていることや、銀行に低金利の資金供給を行う長期資金供給オペを検討していることが明らかになった。

ECB、欧州経済を悲観 新たなTLTROに向け準備=議事要旨

こうした状況を受けて、ドイツの長期金利は下落傾向を強めている。

ドイツの長期金利が低位に留まれば、欧州の投資家が米国債を選好するようになるため、米国の長期金利にも下方圧力がかかる。FRBのバランスシート縮小と財政支出拡大による米国債の需給悪化が表面化しにくくなる。米国の長期金利が上がらないことが、リスク資産の上昇を支える。

しかし、先に書いたとおり、リスク資産は歴史的高値圏にあり、米国でさえ緩和余地は小さい。金融緩和は時間稼ぎにはなるかもしれないが、状況そのものを解決してはくれない。特に、金融市場が当局を催促する形で金融緩和の織り込み度合いを強めてしまえば、その事自体が金融緩和の限界を近づけてしまう。

市場が期待する通り、FRBのバランスシート縮小が年内に終了される見込みが急浮上しているが、株式市場の過度な上昇と米経済のインフレ懸念が金融引き締めの停止を難しくする可能性を軽視しないほうがよいだろう。リスク資産市場が上昇すればするほど、その上昇の根拠を揺るがしてしまうという関係性には大きな危険がある。