利上げ停止の急速な織り込みが生む非対称のリスク

年始からの株式市場のラリーが続いてる。

米国株はV字回復といえるような急上昇ぶりを見せており、その他の市場と比較しても頭一つ抜けた上昇ペースとなっている。

FRBの利上げとバランスシート縮小の停止がすでに確定したかのような雰囲気があり、利下げの再開がいつになるかに注目が集まっているくらいである。個人的には、市場が期待するほどには金融政策の方針が変わったとは思わないが、とにかくそうなっている。

米国の長期金利は下げ止まったようにも見えるが、2.6%台で推移している。これは2018年全般より低い水準であり、株価を支える要因の一つとなっている。

昨年12月の会合時点でのFedの自己申告では2019年の利上げ回数は2回であった。記事を執筆している時点で、直近の3月のFOMC後の金利を市場は以下のように織り込んでいる。

  • 2.00% – 2.25% : 1.3%
  • 2.25% – 2.50% : 98.7%

市場の考えとして、利上げはありえず、現状維持で一致しているようだ。昨年後半からの金融市場の動揺と、それを受けてのパウエル議長の引き締め姿勢軟化を考慮すれば妥当といえるだろう。パウエル議長は最近の発言の中で現時点では利上げも利下げもせず、様子見をするという内容の主張をしている。

次に、2019年最後のFOMCである12月の会合後の金利予想を見てみると以下のようになっている。

  • 1.75% – 2.00% : 0.4%
  • 2.00% – 2.25% : 14.3%
  • 2.25% – 2.50% : 85.3%

現状維持が多数派であることに変化はないが、一度の利下げを見込む確率が上昇している。これが妥当な予測であるかどうかを見極めることは難しいが、注目すべきは2回の利上げというFedの自己申告と、利上げなし、あるとしたら利下げという市場の予測(期待)にギャップがあるということである。

この利上げなしというシナリオを市場は既に織り込んでしまっており、それが年始からの株式市場のラリーの背景であると考えている。だから、今後パウエル議長が利上げを停止してもそれは市場にとって想定通りを確認する以上のことにはならず、したがって株式市場はそれほど上昇しない可能性が高い。対して、利上げが実施された場合は市場にとってネガティブサプライズとなり、さらなる下落の引き金となるだろう。今後の株式市場の値動きについて、上下方向のリスクが非対称になっているのだ。

米国や欧州で長期金利が下がり、米国株以外に新興国株やハイイールド債、それに金価格も上昇の勢いが強い。これでは金融緩和環境での市場の動き方そのものである。米国の緩和再開を前提とした相場だとすれば短期的なドル高が説明しにくいが、目前に迫った英国のEU脱退や足元の経済指標の悪化によるユーロ安を理由とすることはできるだろう。

FRBは金融緩和を再開するどころか、まだ利上げもバランスシート縮小も停止していない。たしかに市場は昨年後半からの急落で、利上げの一時停止とパウエル議長の様子見姿勢を引き出すことに成功した。しかし、引き締めの停止では満足せずに緩和の再開を催促するならば、より大きな下落が必要だと考えるのが論理的ではないだろうか。リスク資産の再度の下落なしに緩和再開は期待できないのに、先にV字回復してしまうのでは、市場の期待が裏切られる未来しか見えてこない。期待が行き過ぎるほど、そうならなかった場合のショックは大きくなるだろう。