FRBバランスシート縮小政策にも停止の可能性、金価格は上昇中

昨年末の急落から株式市場は急激に値を戻している。

原因はFedの金融引締め姿勢の軟化である。パウエル議長は今月4日の発言の中で、金融市場の下振れリスクに今まで以上に注意を払い、金融引締め政策の方針について柔軟に対応していくと表明した。米金融当局のこの姿勢転換を受けて、リスク資産に資金が戻る流れが続いている。

S&P500指数は年末の急落分をほぼ全て取り戻しており、10月からの急落で見ても半分ほどを戻している。

このような状況の中で、利上げを停止すべきかどうかが熱心に議論される一方、これまではそれほど注目されていなかったバランスシート縮小政策に市場が目を向け始めている。これは今後の市場の動向を占う上で重大な変化である。

米金融当局のバランスシート縮小、注目浴びてメッセージに「混乱」

現在の金融引締め政策は利上げとバランスシート縮小の2本立てで進められている。バランスシート縮小政策とは、中央銀行が量的緩和政策によって金融市場へ供給してきた資金を引き上げる政策である。これらの資金は金融危機以降の株高を演出してきた最大の要因の一つである。したがって、2018年を通じてリスク資産市場から資金が流出した原因は、このバランスシート縮小政策にあると考えられる。

バランスシート縮小政策は2017年に開始されているが、上記のbloombergの記事内に掲載されているグラフから分かるように、量的緩和開始後に急拡大したFRBのバランスシートは未だ最大水準に近いままである。

それでもFRBがバランスシートを縮小し始め、ECBが資産購入を停止することで、世界の中央銀行のバランスシートの合計規模は2019年から減少に向かうと見られていた。ところが、景気減速を懸念する中国が金融緩和に舵を切り始めている。

アングル:今年の中銀流動性供給、中国などの緩和でプラス維持も

この状況で米国までもがバランスシート縮小をやめてしまえばどうなるか。結局、中央銀行のバランスシート合計規模は縮小するどころか再拡大し、金融市場へはさらなる流動性が供給されるのではないか。そういうシナリオが出てきているのである。

以上を踏まえると、量的緩和バブルの崩壊を想定した株式市場の空売りは戦略の練り直しを迫られるだろう。リスク資産の下落にのみ資金を投じるやり方では、リスクが大き過ぎる。

仮に世界の金融政策が緩和方向に逆戻りするとなれば、考えられるのは金価格の上昇だろう。金利が下がり、通貨の価値が下がれば、物価が上昇する。典型的な金価格上昇のパターンである。

実際に金価格は上昇を始めている。金融政策引き締めへの方向転換がうまくいっていないことを、すでに市場は織り込み始めている。

米国の長期金利を見てみると、株価急落とタイミングを合わせるように下落した後、株価ほどには水準を戻せておらず、2.7%台で推移している。このように債券市場でも金融環境の引き締めに懐疑的な動きが確認される。

次にインフレ連動債の動向を見てみると、中期的に下落(実質金利は上昇)している。名目金利が上昇しておらず、実質金利が上昇しているということは市場が見込む期待インフレ率が下がっているということである。

もしも金融引き締めが失敗して金融環境が緩和方向に逆戻りするのなら、金利が下がり、通貨の価値が下がり、物価が上昇し、リスク資産の価格も再び上昇するだろう。

より壮大な見方をすれば、一度始めてしまった量的緩和政策に出口はないことが明らかになることで、米ドルをはじめとする既存通貨への信任が大きく揺らぎ、代わりに金が急騰するかもしれない。将来的な金本位制の復活まで考えたくなってしまう。

現状で期待インフレ率が下がっているのに金価格が上昇しているということは、このような考え方が決して大げさではないことを意味しているのではないか。米国の金融引締めを理由に日経平均の空売りを進めてきたが、今後はリスクヘッジのためにも金の買いを考えていきたい。