パウエル議長発言で株式市場の下落は決定的

株式市場でまたも大幅な下落が発生している。直接的なきっかけは、12月のFOMCにおける今年4度目の利上げ、そして記者会見でのパウエル議長の発言だった。

事前に株安と金利低下が進んでいたことで、来年の利上げ停止まで含めた予想が増える中、今回のFOMCでも予定通りに利上げが実施された。これで、米国の政策金利は2.25% – 2.50%の水準となった。ドットチャートが示す、来年の利上げ回数は3回から2回へ減少したが、声明文の内容は市場が期待するほど緩和的には変化しなかった。

会合後の記者会見においてパウエル議長は、従来から主張していたとおり、金融政策の方向性は実体経済への影響の観点から判断していくことを示した。また、株式市場が短期的に急落していることを認めながらも、バランスシート正常化については変更を想定しないと述べた。この発言によって、FRBが株式市場に助け舟を出すという期待は崩れてしまった。

すでに大幅に下落していた株式市場はさらに下落幅を拡大し、翌日以降も流れは止まらず、連日下落し続けている。

FOMC前の段階から株安と長期金利の低下が進んでいたことは、金融引締めをやめるべきだという市場から当局へのメッセージだった。しかしFedはこれを無視する形で、引き締め政策を継続する姿勢を明らかにしたことになる。

これほど大規模な株価下落にもかかわらず、パウエル議長はあくまでも金融市場の動向は意に介さないようである。しかし、パウエル議長が何よりも重視している実体経済の好調ぶりに、下落する株価は影響を及ぼさないのだろうか。

この認識はおそらく重大な誤りを含んでいる。企業や家計は保有する金融資産を担保に資金を借り入れており、担保価値が下がれば借り入れ可能な金額は減少する。すると、企業や家計は抱えている債務の一部を返済する必要に迫られる。返済のための資金は支出を切り詰めるか、あるいは保有する金融資産を切り売りすることで捻出するしかない。

つまり下記に示すような経路で自己強化的なサイクルが発生する。

資産価格下落 -> 担保価値下落 -> 借り入れ可能額減少 -> 債務返済の必要性 -> 支出削減、金融資産の切り売り -> 景気後退、資産価格下落

金融市場と実体経済は密接な関係にあり、この当たり前のことを見過ごせばまたしても危機への対応が遅れてしまう。金融市場の特性として将来の予測を先へ先へ織り込もうとするのであり、そのタイミングは実体経済よりもかなり早い。実体経済の減速が実際の経済指標に現れるころになって慌てて金融引締めを撤回してももはや手遅れである。

FRB議長ともあろう人物がこの程度のことを理解していないはずがないのに、なぜ今回のような発言となるのだろうか。とにかくこれで、急落する株式市場の投資家たちが救われることはなくなった。個人的には空売りを追加する機会を待っていたので残念だが、あまりに決定的な出来事である。