株式市場の下落は利上げを止めるか

米連邦準備理事会(FRB)は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の誘導目標を2.00-2.25%に引き上げることを全会一致で決定した。

今後の利上げ見通しについては、年内12月にあと1回、2019年は3回、2020年は1回の実施が予想されている。声明に関しては、金融政策の運営姿勢は引き続き「緩和的」であるという文言が削除されたことが注目された。これは、FRBが現在の金利はすでに緩和的でない、つまり中立的な水準に近いと考えていることを示している。

長短金利の水準が上昇しているにもかかわらず、現在の米国景気は堅調であり、今後の利上げも上記のとおりに着々と実行される可能性は高い。逆に、景気後退や株式市場の急落が発生した場合、FRBは利上げの停止や利下げに踏み切ることができるのだろうか。

利上げ停止の障害になりうる要素の一つは物価動向であり、現在の米国のインフレ率は以下のようになっている。

関税や原油高の影響を受け、CPIは上昇傾向にあるものの、コアの数値は2.0%をやや上回る水準で安定して推移している。このインフレ状況を見るに、景気後退時の利上げ停止について、インフレが障害となることは今のところはなさそうだ。

懸念点として、現在の原油価格の高騰は主に供給制約によるところが大きく、景気後退によって需要が減少しても原油価格が高止まりする可能性がある。しかし、産油国にとっても際限のない原油価格上昇は世界景気の後退を招くだけであり、望ましくない。

ドルに関しては、仮に米国が利上げ停止に踏み切ったとしても、米国の景気後退は世界の景気後退であり、利上げによって引き起こされたドル高新興国通貨安の流れが逆流する可能性は低い。

したがって、インフレ亢進のリスクは小さく、米国の利上げはいつでもやめられる状況にある。景気後退はもちろん、現在の新興国株式市場の下落トレンドが本格的に米株式市場に波及した場合も、FRBは利上げを停止することができる。しかし、パウエル議長は金融市場の動向を重視しておらず、そのために株式市場の下落に対する対応が遅れ、金融市場の崩壊が実体経済を巻き込むというシナリオは十分に考えられる。利上げ停止が可能かどうかと、実行されるかどうかは別だということである。

景気後退が先にくれば素早い対応が期待できるが、株式市場の下落が先にくれば手遅れになる危険がある。では、株式市場はどうなっているか。利上げだけでなく、バランスシート縮小という強力な金融引締めが実行されている中で、米国株式市場は最高値を更新中である。

その裏で長期金利は3%台まで上昇している。米国株と米国長期金利が共に上昇しているということは、金融引締めによって新興国から引き上げられた資金が、国債市場よりも株式市場に流れ込んでいるということである。

投資家のリスク選好度合いが高いことは、ドル円や日経平均が足元で急上昇していることからもわかる。その一方で、株式市場を牽引してきた米国ハイテク株の上昇の勢いがやや弱まっているようにも見えることが個人的には気になっている。具体的には、AmazonやAppleの上昇はなおも力強いが、GoogleやNetflixなどは高値まで回復するかやや怪しくなってきている。

実体経済の減速は月ごとや四半期ごとの指標でしか観測されず、トレンドとして景気後退が認識されるまでには時間がかかる。対して金融市場の動向は常に観測可能であり、投資家の期待を即座に反映する。もしも今、経済が堅調と考えられている状況で、株式市場が下落を始めたら当局はどう対応するのか。対応が遅れてしまったとき、また金融危機が起きてしまうのではないか。