債務のサイクルと景気変動

信用による支払いが可能な経済では、債務の動向が景気変動に影響を与える。

例えば、設備投資を行うことで生産性の向上が見込める場合、その分増えた利益を使って債務を返済することができるので、積極的に借金をする動機が生まれる。実際に借り入れによる設備投資を行ったとすると、債務の返済が済むまでは、所得の一部を債務返済に回さなければならない。

信用による支払いとは、現在の支出を一時的に所得以上に増やす代わりに、将来の支出を減らすということである。つまり、支出の先取りである。この短期的な債務のサイクル(5〜8年程度の周期)が、景気変動の主な要因である。

景気が後退すると、中央銀行は政策金利を下げることで債務者の負担を減らそうとする。債務が十分に解消されると、支出が増え、経済は再び拡大し、次の景気サイクルが始まる。一つの景気変動を乗り越えると、企業や家計は更なる利益のため、次のサイクルでは前回以上に債務を増やす傾向がある。景気後退時には前回より低い金利が求められるようになる。

景気変動を繰り返すたびに政策金利を下げていった結果、やがて(名目の)金利は下限の0%に達し、利下げによる緩和は限界に達する。積み重なった債務は返済不可能になり、大規模な信用収縮が発生し、経済は深刻なダメージを受ける。1920〜30年代の大恐慌や、2008年の金融危機は長期的な債務のサイクル(75〜100年程度の周期)における信用収縮であると考えられる。