信用の拡大と収縮

経済は買い手と売り手の取引で成り立っている。売り手は物やサービスを提供し、買い手は現金や信用(将来の支払いの約束)で支払いを行う。このとき買い手が支払ったお金が、売り手の収入となる。信用による支払いが可能であることは、収入以上の支出が可能であることを意味する。

この「信用による収入以上の支出」が信用拡大のサイクルの原動力である。ある人が支出を増やすと、その支出は別の誰かの収入であるから、その人の収入が増えることになる。収入が増えた人は、多くの借り入れが可能になり、支出をさらに増やすことができる。このようにして、経済の中で取引が進むに従って信用の拡大が進み、経済は拡大し、資産価値は上昇してゆく。

しかし、信用拡大のサイクルは永遠には続かない。信用拡大が進むにつれて、世の中に出回るお金の量に比べて、企業や家計が抱える債務の額が大きくなっていく。このとき、信用による支出が所得よりも速いスピードで増加してしまうと、所得のうちの多くを債務の利払いや元本返済に回さなければならなくなる。

このような状況で誰かが支出を切り詰め始めると、その分だけ別の誰かの収入が減る。収入が減少した人は、同じように支出を減らしていく。こうして信用収縮のサイクルが回り始め、景気は急速に後退していく。

信用の拡大と収縮のサイクルは、どちらも自己強化的な性質を持つ。支出の増加(減少)が更なる支出の増加(減少)を呼ぶからである。ひとたび信用サイクルに勢いがついてしまうと、それをコントロールすることは難しく、景気の大きな変動は避けられない。そのため、中央銀行は金融政策(政策金利の調整など)によって、信用の拡大や収縮を管理しようとする。