コロナ後の上昇相場は終盤へ、米国株と仮想通貨が上昇し得る理由

コロナ後の世界経済の回復が止まりつつあり、米国では金融引き締めが実施される見込みとなっている。最高値を更新し続けている米国株式市場も近く下落するだろうか?金融市場で今から買えるものはあるだろうか?

中国経済の減速が深刻化

まず最新の経済統計によって中国経済の不調が明白になった。7月の鉱工業生産、消費支出、投資活動は揃って前年同月比の伸び率が6月から鈍化している。

中国7月鉱工業生産・小売売上高、予想以上に伸び鈍化 景気減速も

米国や日本のような現金給付が行われなかった中国では家計の過剰貯蓄が存在せず、経済再開後も個人消費の伸びしろがなかった。世界的な景気回復や長引くサプライチェーンの混乱などにより原材料価格が高騰する中で、中国では生産者物価と消費者物価の乖離が起きた。国内の消費が弱いために、製造業企業は生産コストの増加分を消費者に転嫁できなかったのである。

中国PPI、7月は前年比+9%に加速し経済を圧迫 CPIは減速

そういうわけで最近の中国経済は輸出に依存する形となっていたのだが、国外の生産能力が回復していることや中国内の港湾や工場でコロナ感染者が出たことなどによって、頼みの綱の輸出が減速し始めている。

中国貿易統計、7月は輸出入とも鈍化 製造業の抑制傾向示す

2020年にはコロナショックからいち早く回復し、世界経済の牽引役となった中国経済だが、現在は一番のリスク要因に変わっている。

現金給付効果が剥落する米国経済

続いて、米国では現金給付による消費の押し上げ効果が失われてきている。

今週発表された7月の小売売上高は前月比1.1%減と市場予想以上の落ち込みとなった。以下は小売売上高のチャートである。変化率ではなく実際の金額で示している。

最後に現金給付が行われたのは今年3月であり、小売売上高は4月にピークをつけている。その後は高止まりしつつも徐々に減速してきているようである。追加の現金給付がなければ減速傾向は続くだろう。

個人消費の鈍化を示すもう一つの数字はインフレ率である。以下はCPI(前月比年率)のチャートである。

7月のCPIは5.8%の上昇となり、6月の11.4%から減速している。コア指数のほうも似たような推移となっており、現金給付によって押し上げられた個人消費の勢いが弱まってきていることがわかる。

資金の流入先が狭まる金融市場

米中経済の先行きが芳しくないことがわかったところで、最近の金融市場の動きを確認したい。

中国株式市場

以下は上海総合指数のチャートである。

高値をつけたのは2月であり、そこからは概ね横ばいの推移となっている。中国経済の減速はかなり早い段階から市場で織り込まれていたことになる。

以下は香港ハンセン株価指数のチャートである。

こちらはより下落傾向がはっきりとしている。中国では最近、政府によるテクノロジー企業や教育系企業への規制が相次いで実施されたこともあり、実体経済の状況以上に投資家心理が悪化している。

アジア株式市場

中国と地理的、経済的に近い国にも影響が波及しているようである。

以下は日経平均のチャートである。

中国の株式指数と同じく、2月のピークから下落傾向が続いている。

以下は台湾加権指数のチャートである。

7月から下落トレンドとなっている。

以下は韓国総合株価指数のチャートである。

8月から下落トレンドとなっている。

コモディティ市場

中国経済不調の影響は、これまで好調だったコモディティ市場にも及んでいる。

以下は原油価格のチャートである。

直近の安値を割り込んでいる。

以下は銅価格のチャートである。

こちらも安値を割っている。

一方で、コモディティ市場の中でも農産物には比較的好調を維持しているものが多い。

以下は砂糖価格のチャートである。

好調な値動きが続いている。

以下は小麦価格のチャートである。

こちらも上昇トレンドを維持している。

このようにコモディティ市場全体から資金が抜けているというよりは、実体経済との連動性が強い原油や銅から資金が抜けていることが読み取れる。

また、米国で今後テーパリングが行われるという都合上、金価格も弱い値動きとなっている。

米国でインフレ懸念が高まったことで4月から5月にかけて上昇していた金価格も、その後は再度下落となっている。米国で現金給付の効果が薄れていくならばインフレも後退することになるからである。

米国株式市場

さて、中国経済の先行き懸念でアジアの株式市場、原油や銅が売られ、米国のテーパリング懸念でゴールドも買えないとすると、それらの資金はどこへ向かっているのだろうか。答えは米国株式市場である。

以下はS&P500のチャートである。

綺麗な右肩上がりになっている。積極的に買えるものがなくなってきた状況で投資家は米国株への資金流入を止めていない。

しかし、同じ米国の株式市場でも実体経済の影響を受けやすい中小企業中心のRussell2000指数の値動きは違ったものになっている。

上昇は3月で止まり、その後は横ばい、直近ではやや怪しい値動きとなっていることがわかる。現金給付の景気浮揚効果は今後さらに薄れていき、金融政策面ではテーパリングが実施されるのである。米国株式市場でも本当に好調なのは一部の大型優良企業に絞られてきているということである。

仮想通貨市場

その他に資金が流入しているのは仮想通貨市場である。

以下はBitcoinのチャートである。

5月の急落を経て、再度上昇し始めている。Ethereumなど他の主要な仮想通貨も同じような値動きとなっている。

まとめ

多くのチャートを見てきたが、現在の金融市場は中国の景気悪化と米国経済の先行き懸念の織り込みが段階的に進んでいる状況であると思う。一部の市場から資金が引き上げられ始めており、それらの資金はより限られた市場、米国大型株や仮想通貨などに移っているようである。

個人的にはBitcoinを始めとする仮想通貨を、不換紙幣への不信感によって買われるというゴールドのような側面と、投機的需要によりリスクオンに伴って上昇する側面を併せ持つ資産であると認識している。テーパリングを見据えて金価格が軟調に推移する中で仮想通貨が上昇しているということは、投資家のリスク選好度合いはまだそれほど弱まっていないということではないか。

米国の長期金利が低下を続ける状況では、このような限定的なリスクオンはしばらく続く見込みがある。また、人気の落ちた市場から一部の市場へ資金が集中する可能性もある。このような相場では安くなったものを拾うやり方は悪手であり、上昇トレンドを維持しているものを買うべきだろう。それは今の相場ではS&P500指数銘柄やBitcoinということになる。