物価上昇で利上げが進むロシア、米国の金融引き締めとの関係性を考える

米国の金融引き締め動向が相場のテーマとなって久しいが、今回はロシアの金融引き締めについて取り上げてみたい。

米国の先を行くロシアの金融引き締め

米国の金融引き締めが今後どのように進められるかに投資家が注目する中、ロシアでは今年に入り既に4度の利上げが実施されている。

ロシア中銀、100bpの利上げ インフレ対応に追加引き締め示唆

ロシアのインフレ率(前年同月比)の推移は以下のようになっている。ロシア中銀のインフレ目標が4%のところ、6月のインフレ率は6.5%まで上昇している。それで利上げが進んでいるのである。

米国の金融引き締めという重要イベントが先に控える状況で、ロシアの利上げは先行事例として参考になるだろうか。とはいえロシアの金融引き締めのほうもまだ始まったばかりであるから、ここではまず過去の事例を取り上げたい。

2014年の高インフレと利上げの影響

近年のロシアの高インフレ期といえば、2014年から2016年にかけてのものだろう。2014年に複数のマクロ要因が重なって原油価格が急落すると、原油を最大の輸出品目とするロシアの通貨ルーブルは大暴落した。以下は当時の原油価格とUSDRUBのチャートである。

急激な通貨安は輸入物価の高騰という形でロシアにインフレをもたらした。ロシア中銀はインフレ抑制のために利上げを行い、最終的に政策金利は10%台後半に至った。以下のチャートはロシアの政策金利とインフレ率を並べたものである。

これほどの利上げが行われれば、株式市場が影響を受けないわけがない。ロシアの代表的な株式指数であるRTS指数の当時のチャートを以下に示す。

もともとロシアの株式市場は2011年から続く下落トレンドの最中にあったのだが、株価は2014年末と2016年頭に当時の大底をつけている。大雑把に、前者はインフレ率と政策金利がピークとなった時期、後者は原油価格が大底を打ったときと捉えてよいだろう。

現在のロシアで起きているインフレは原油安によるものではないが、インフレが止まらず、利上げが続けば、2014年末と同じような展開になる確率は高い。

ロシア株式市場を支えた米国の低金利

ところでロシアの株式市場がどうなるかはロシアの国内事情だけで決まるわけではない。特に新興国市場にとって、米国の金利動向は大きな影響を受ける要素である。

2014年末にロシア株式市場が暴落したとき、米国の長期金利は低下局面にあった。以下はその頃の米国10年金利のチャートである。

米国の金利低下はロシアの株式市場にとってはプラス要因である。もしもこの金利低下環境がなかったなら、ロシアの株価はより大きく下落していたはずである。

2021年の状況

改めて現在の状況を整理してみる。まず、ロシアのインフレ率も政策金利も上昇はしているものの、2014年の水準にはかなり遠い。インフレと利上げのトレンドは初期段階にある。

したがって、ロシアの株式市場も今のところ上昇トレンドを維持している。

また、今年第1四半期に急騰した米国の長期金利も4月以降は低下傾向が続いている。上のRTS指数が米金利動向の影響を受けていることがよくわかる。

この状況はいつまで続くだろうか?もしもこのままインフレ率の上昇が止まらなければ、ロシア中銀は利上げを継続するだろう。政策金利の水準が上がっていけば株式市場もそれを無視できなくなってくる。そして、米国の長期金利のほうも無限に低下し続けることはできず、インフレ懸念が再燃すれば再び急騰する可能性もある。2014年には米長期金利が低下してロシア株式市場を部分的に支えたが、今回はロシア国内の利上げ状況に米金利上昇が重なる可能性がある。その場合は株安の規模も当時より大きくなるかもしれない。

まとめ

筆者が言いたいのはロシアの株式指数を空売りすべきだということではない。まだ条件は揃っていないし、RTS指数は上昇トレンドにある。

考えたいのは、米国のインフレ動向とそれに伴うFedの金融引き締めというテーマについて、仮に米国で金融引き締めが進んだ場合にどこの市場が最も大きなダメージを受けるかということである。現在の状況ではその候補の一つがロシア市場であるかもしれない。米国の金融引き締めが原因だからといって、米国市場が最も影響を受けるとは限らない。

さらに言えば、普通、世界的な株安局面では新興国市場などリスクが大きいと考えられている市場ほど先に下落が始まり、最終的な下落率も大きくなる傾向がある。S&P500指数に含まれるような米国の優良大型株が下落するのは一番最後である。その意味でも、これから先の相場で米国の金融引き締めがリスク資産にどの程度影響してきているかを知るのに、ロシアの株式市場は一つの指標として役に立つはずである。