P&Gがコスト高で製品値上げ、コモディティ価格の上昇が日用品にも波及

米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が原材料コストの上昇を理由に、一部製品の値上げをする方針を示した。

P&G、一部消費者向け製品を値上げへ-原材料コストの上昇に対応

値上げの要因としてパルプと石油関連のコスト上昇が挙げられている。コモディティ価格は昨年から上昇しているが、その影響が消費者向け製品の価格にも出始めたということである。

コモディティ価格上昇とドル安

以下は原油価格の過去5年の推移である。

新型コロナショックによる価格下落の後、60ドル付近まで上昇しているが、水準としてはコロナ前に戻っただけである。既にこの段階で日用品価格の上昇が始まっているのだから、さらに価格が上昇していけば日用品価格も上昇していくということである。原油に限らず、コモディティ価格は全般的に上昇している。

以下は同じく過去5年のドルインデックスの推移である。

新型コロナウイルスによる景気後退に対して、米国では量的緩和と現金給付が実施された。貨幣を新たに発行した分だけドルの価値は薄まることになり、コロナ前の水準と比べてドル安となっている。ドル安は米国人にとって輸入物価の上昇を意味する。原材料であれ、完成品であれ、外国からモノを購入する際に払わなければならないドルの量が増えるということである。

勢いづく消費

インフレの兆候は他にもある。バイデン政権による1400ドルの現金給付や、ワクチン普及による経済再開などによって、3月の米国小売売上高は前月比で9.8%の大幅な伸びとなった。

米小売売上高9.8%増、10カ月ぶり大幅な伸び-景気回復に勢い

実額での推移は以下のようになっている。

コロナ前のトレンドと比べて大きく上振れている。今のところは景気回復過程の一時的な事象と考えることができるが、米国の現金給付がやりすぎであったのかどうかが今後このチャートに現れてくることになる。

伸び悩む賃金

一方で、米国の賃金上昇率は低位で推移している。

米国の失業率は下がってきているとはいえ未だ6.0%であり、賃金上昇につながるほど労働市場が逼迫するにはまだ時間がかかるだろう。

加速する消費者物価

3月の米国消費者物価指数(CPI)は総合で0.6%上昇、コア指数で0.3%上昇と加速している。総合指数の前月比の伸びとしては8年半ぶりの水準だという。この数値は年率換算すれば7.7%程度の上昇率であり、米国において物価高騰は始まっている。

FRBのパウエル議長はこれまで、2021年に予想されるインフレ率の上昇は一時的なものであるから金融緩和を続ける方針には影響しないという姿勢だった。しかし、今月8日付の書簡の中で「FRBはインフレ率が2%を大幅に超えることも、この水準を長期的に上回り続けることも望んでいない」としている。

FRB、インフレの大幅な目標超えは容認せず=パウエル議長

ややニュアンスが変わってきているようだが、おそらく物価上昇に対しては後手に回ることになるだろう。労働市場の低調さや2018年の金融引き締め失敗の経験がそうさせる可能性については以前書いた。

テーパリング懸念は続くか、緩和継続シナリオのトレード戦略

まとめ

コモディティ価格の上昇、ドル安、消費の伸び、とインフレ要因は揃ってきており、消費者向け製品の価格も上がり始めている。賃金上昇率は今のところ低いが、労働市場の低調さが金融引き締めの早期実施を難しくする面もある。

現在の米国で起きている物価上昇が一時的なものかどうかは後になってからしか分からないが、投資家の認識の変化は日々の市場に反映されている。物価上昇を見込んでコモディティを買えば、それが原材料費の上昇という形で実際に物価上昇を引き起こすことになるのである。