景気刺激策縮小を目指す中国、金融市場への影響

引き続き米国のインフレと長期金利の動向に関心が集まっているが、金融市場はアフターコロナの各国の政策方針を着々と織り込んでいる。現在も経済への大規模な流動性注入を続けている米国や欧州諸国と異なり、中国は経済の正常化を進めようとしている。

ブレーキを踏み始めた中国

今月5日に開幕した中国の全国人民代表大会では2021年のGDP成長率目標を6%超に設定することが発表された。参考として、IMFは1月公表の年次報告書で2021年の中国の経済成長率見通しを7.9%としている。中国政府による成長率目標が控えめに設定されていることがわかる。対GDP比の財政赤字は前年の3.6%から3.2%へ減少する計画になっている。

中国全人代開幕、6%超の経済成長目指す-保守的な目標掲げる

中国、21年は適度な支援策維持を=IMF年次報告

また、金融政策の面でも引き締め方向へ舵が切られつつある。中国人民銀行は政策の急激な変更はないとしているものの、関係者からは国内の不動産市場バブルや米欧の金融市場バブルへの懸念が表明されており、政策方針として金融リスクの抑制が意識されている。

中国の金融政策、選択的な成長支援が必要=人民銀行総裁

中国、海外金融市場や国内不動産バブルを「懸念」-銀保監会主席

株式市場への影響

インフレのリスクを負って経済成長と名目の資産価格上昇を目指す米国とは対称的に、中国は景気刺激策を縮小しようとしている。そして、この政策方針の違いを市場は織り込んでいっているように見える。

例えば株式市場を見てみると米国のほうが株高になっている。以下のチャートは米国のS&P500指数(青)と中国の上海総合指数(オレンジ)の変動率を2020年初めを基準に重ねたものである。

思い出してもらいたいが、2020年の実質GDP成長率は米国で3.5%のマイナス、中国で2.3%のプラスだったのである。中国はコロナ被害を相対的に小さく抑えたため、3月の底値での株価下落率も小さかった。しかし、その後は米株価が急回復して追い抜いている。その最大の要因は米国で行われた財政・金融両面からの大規模流動性供給だろう。直近の値動きでは更に差が目立っている。

為替市場への影響

何もないところから生み出したお金を家計と金融市場へ送り込んで株価を押し上げたのだから、当然そこには副作用が伴う。それは為替市場において通貨の希薄化(通貨安)として起きるのが自然だろう。

実際に米ドルは2020年を通じて対人民元で一方的に下落した。

ここ数ヶ月はドル高となっているが、それは米国で実質金利が上昇しているからである。

FRBのパウエル議長は今のところ長期金利水準に介入しない姿勢だが、株式市場や実体経済が金利の高騰に耐えられないことが明らかになれば、なりふり構わず金利を抑え込みにかかる可能性がある。そうなればドル安人民元高のトレンドは再開するだろう。

長期金利はどこまで上昇するか? 株価からの観点

このことは一足先に長期金利抑制に動いたECBの例を見ればわかる。3月11日の理事会でECBは、上昇した長期金利が景気回復を妨げることを懸念して追加緩和を実施することを発表した。

ECB、金利上昇抑制へ資産購入拡大 「かなり速いペース」で実施

その後、ユーロは人民元に対して下落している。

ユーロ人民元の売り、ドル安以外の投資戦略を検討

同じことがいずれドル相場でも起こるのではないか。

今後の見通し

米国ではインフレと資産価格の上昇が進んでいるようだが、実質金利の上昇が止まればインフレという「モノに対するドル安」と同じように、為替市場でも「他国通貨に対するドル安」が進むことになる。景気刺激策の縮小という、米国とは逆の方向へ向かおうとする中国の人民元はその指標になると筆者は考えている。昨年から米国で行われていることの本当の意味は、上昇し続ける株式市場だけを見ていてはわからない。