長期金利上昇でぐらつく株式市場、実質金利の上昇が意味するものは何か

米国の長期金利の上昇が止まらない。ここまでは金利上昇と株高が両立してきたが、少し前から市場がぐらついている。

長期金利は一時1.5%超え

米国の長期金利は上昇の勢いを強め、25日には1.5%を超える水準まで上昇した。

これを受けて株式市場がやや崩れている。以下は米国のS&P500指数のチャートである。

長期金利の上昇は株式に対する債券の魅力を高めるため、株価の調整はどのタイミングで起きてもおかしくない。株価が高騰している状況ではなおさらである。

金利上昇の質的変化

現在起きている金利上昇は米国に限らず世界的なものであり、アジアやヨーロッパでも長期金利は上昇している。新型コロナウイルス危機からの経済の回復を期待する動きと解釈してよいだろうか。

長期金利の上昇自体は昨年8月頃から続いてきたことだが、その内容が変わりつつある。名目の金利は期待インフレ率と実質金利に分解できる。ここまでの金利上昇の主要因は期待インフレ率の上昇であり、実質金利が上がらなければ株式市場は大丈夫だとする見方もあった。その関係性に変化が起きている。

直近の金利上昇局面では期待インフレ率はむしろ低下しており、それを上回る実質金利の上昇が名目の長期金利を上昇させていることがわかる。実質金利は長期金利の上昇が始まった昨年8月以来で最も高い水準にある。

その結果、金利上昇に弱いハイテク株中心のNasdaq指数はS&P500指数よりも下落幅が大きくなっている。

また、実質金利と負の相関関係にある金価格も安値を更新している。

実質金利はなぜ上昇しているのか

これまで-1.0%付近で推移してきた米国の実質金利が有意に上昇しているとすれば、市場で何か変化が起きているということである。株価の下落は変化ではない。なぜなら実質金利の上昇が株安を招いているのであり、その逆ではないからである。

今週23日と24日、FRBのパウエル議長が上院と下院で半期に一度の議会証言を行った。議長は金融政策について、引き続き景気回復に主眼を置く必要があるとし、金利は当面低水準にとどまるとの認識を示した。

FRBの正副議長、緩和策の維持強調 早期引き締め観測に

FRBの見通しではインフレ率は2023年まで目標の2%を下回って推移することになっている。もしも市場参加者がこれより早いインフレ亢進の到来を予想し、その時にFRBが金融引き締めに踏み切ると考えるなら、実質金利が上昇する要因になり得る。

しかし、金利先物市場に織り込まれている市場の利上げ予想に特に大きな動きは見られない。例えば以下は2021年12月のFOMCにおける政策金利の確率のチャートである。5%程度の確率で25bpの利上げが行われると予想されているが、その織り込み度合いは直近で特に動いていない。

https://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

実質金利上昇の原因が何であるかは現時点ではわからない。インフレ率が目標を超えて高まったときに、適切な金融引き締めが実施されると投資家が考えているのだとすれば、ここからの物価の上昇は株安要因になってくる可能性がある。

株式市場の下落続くか

筆者は現在の株価の下落は短期的なものにとどまると考えている。株安に伴って長期金利が一旦低下しているところを見ても、金利上昇に伴う通常の株価調整局面という印象である。今起きていることは株式市場全体の下落というよりも、ハイテク株から金融株など金利上昇で恩恵を受けるセクターへの資金の移動だろう。

以下は大手銀行のJPモルガンの株価である。

以下は保険会社AIGの株価である。

金融セクターの株価は金利上昇を好感して、市場全体よりも強い値動きになっている。逆にいえば金利上昇局面でこうした銘柄も一緒に下落し始めたときが危険ということである。

今後の見通し

今のところ長期金利の上昇がリスク資産に致命的な影響を及ぼすことは考えにくい。しかし、実質金利の上昇が今後も続くようなら、それは投資家がインフレ亢進による金融引き締めを心配し始めたことを示している可能性がある。その場合は、コロナ後の景気回復期待が株価に対してプラスのものからマイナスのものへ変わることになる。潮目の変化には注意が必要だろう。