2021年、金の投資戦略を考える

金融緩和による流動性供給と巨額財政支出によるインフレが2021年の市場のテーマだとすれば、ゴールドへの投資について考えておく必要がある。

最近の金価格動向

2019年始め頃から続く現在の金価格の上昇トレンドは、パンデミック後の各国政府の紙幣発行にも後押しされ、昨年8月に市場最高値を記録した。

そこから半年ほど価格は下落傾向にあり、現在は1800ドル台で推移している。

金価格実質金利

ファンダメンタルズから見る場合、金価格は主に実質金利(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)に左右される。

銀行預金や国債の金利が高いとき、金利がつかないゴールドは投資対象としての魅力に欠ける。低金利になるほどこの点は気にならなくなる。またゴールドは実物資産であるから、通貨の価値が下がるときにはその分だけ値上がりする。ドル安になればドル建ての金価格は上昇するということである。

実際に金価格と米国の10年実質金利を並べてみると、逆相関の関係になっていることがよくわかる。

実質金利の見通し

したがって、金価格について考えるには実質金利の先行きについて考える必要がある。まず現在の実質金利の動きを確認する。

名目金利(青)から期待インフレ率(緑)を引いたものが、実質金利(赤)である。2020年後半からはマイナス1%付近での推移が続いていることがわかる。

米国では昨年のコロナ対策のための3兆ドル規模の財政支出に続き、バイデン政権でも巨額の財政支出が予定されている。現金給付のような家計の財布に直接資金を送り込む政策も実施され、既に物価は上昇基調に戻っている。経済の正常化が進めば、高まった家計貯蓄が支出に回される可能性は高いだろう。またドル安やコモディティ価格の上昇傾向なども踏まえて、期待インフレ率が着実に上昇しているようである。

今後、米国で高インフレが起きるかどうかはわからないが、条件は整っており、FRBも「平均インフレ目標」として2%超えのインフレ率を容認する姿勢を見せている。

経済正常化期待が高まる中、実質金利がマイナス1%で下げ止まり、期待インフレ率の上昇がつづくならば、名目の長期金利が上昇することになる。問題は株式市場が金利の上昇にどこまで耐えられるかである。2018年のように上昇した長期金利が株価の急落を起こせば、FRBがその水準を長期金利の上限として管理するようになるだろう。例えばイールドカーブコントロールの導入である。

長期金利に上限が設けられると、そこからの期待インフレ率の上昇は実質金利の低下を意味することになる。つまり金価格が上昇するということである。

株価急落時の金価格動向

上記の議論から、インフレによる長期金利の上昇が株価急落を引き起こした時を金の買い場とする戦略が考えられる。しかし、株価急落でリスクオフとなれば金価格はその時点で上昇してしまうのではないか? 株価が急落したのを見てから、ゴールドを買おうとしても遅いのではないか?

この点について一つ指摘しておきたい。

2008年の金融危機の頃の金利と金価格の動向を見ると、以下のようになっている。

リーマン・ブラザーズが経営破綻したのが2008年9月15日である。注目すべきは、名目の長期金利(青)より期待インフレ率(緑)が速く下落したため、リスクオフ局面にも関わらず、実質金利(赤)が一時的に上昇している点である。その影響を受けて金価格(紫)は下落することになった。株価の急落は9月末には発生していたのに、金価格は10月後半から11月前半にかけて当時の底値をつけている。このときには株価の急落を見てから金を買うことができたということである。

実は同じことが新型コロナウイルスショックでも起きている。

米国株は2020年2月20日から下落し始め、3月23日に底打ちをしたのだが、金価格が当時の安値をつけたのは3月半ばである。やはりこのときも、株価の急落を見てからゴールドを買うことができたわけである。

まとめ

筆者は米国でインフレ率が高まることを想定しており、それによる長期金利の上昇がどこかのタイミングで株価急落を引き起こす可能性を考えている。そうなった場合には、FRBによって長期金利の上昇が抑え込まれる形で実質金利の低下局面が訪れ、ゴールドに有利な相場になるだろう。更に、過去の経験から株価急落そのものがゴールドの買い場を提供してくれるかもしれない。