新型コロナウイルスと為替市場、ユーロと人民元の水準は適正か

前回の記事から引き続き、欧州での感染再拡大に関して考察する。

欧州でロックダウン再開、株価市場が示す市場の認識の変化

感染状況に対する株式市場と為替市場の反応の違い

5月から8月にかけて、ユーロはドルに対して大きく上昇した。これは米国の新規感染者数増加に歯止めがかからなかったのに対して、欧州では第一波の収束が見られていたからである。

同時期の米国株と欧州株のチャートを順に掲載する。上が米国のS&P500指数、下が欧州のSTOXX600指数である。

明らかに米国株がアウトパフォームしている。為替市場では「欧州買い、米国売り」であるのに、株式市場では「欧州売り、米国買い」という反対の評価だったわけである。

救える株式市場、救えない為替市場

それはなぜだろうか。答えは各国政府の行動にある。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて導入された行動規制によって、企業利益は減り、失業者は増え、家計の所得は減少した。これに対して主要国政府は金融・財政の両面から景気支援を行った。中央銀行が国債や社債を買い入れ、政府が新たに刷られた紙幣で家計への現金給付や失業手当の上乗せ等を行った。つまり、経済へのダメージを紙幣を新たに印刷することで埋め合わせようとしたのである。

株式市場の立場からすれば、企業利益が減少しても、それ以上に金利が低下すれば株式への投資は正当化され得る。国債の金利がゼロになれば利回りを求める投資家は株を買わざるを得ず、現金給付を受けた個人投資家も新たな資金源となった。

為替市場の立場からすれば、新たな紙幣の印刷(マネタリーベースの増加)、実質金利の低下、インフレ期待の高まり、等はネガティブな要素である。

したがって、経済への悪影響(や株式市場への悪影響)を紙幣印刷で解決しようとする限り、代わりに通貨が犠牲となる。

コロナ収束なら通貨高

実際に、5月から8月にかけて感染が収まらない米国では景気支援の大規模化・長期化が織り込まれ、ドルはユーロに対して大きく下落した。EUR/USDのチャートを再掲する。

同じ現象が人民元相場でも見られた。中国では(少なくとも公式発表では)3月以降は新規感染者がほとんど出ておらず、主要国中で最も早く経済活動再開へ向かった。経済指標等で景気回復のシグナルが見られるのも早かったため、6月頃から人民元はドルに対して一方的に上昇し始めた。以下がUSD/CNHのチャートである。

以上のように、新型コロナウイルスの感染状況が収まっている国の通貨ほど買われる相場だったのである。景気支援のために必要な紙幣印刷が少なく済むからである。

欧州に感染第二波到来

8月頃になり、フランスやスペインで1日あたりの新規感染者数が再度増加し始めるとユーロの上昇はストップした。中国では引き続き新規感染者数は抑え込まれたため人民元の上昇は続いた。その結果、EUR/CNHのトレンドが反転した。

現時点でEUR/CNHはコロナ前の水準にようやく戻りつつあるが、ここに疑問がある。冷静に考えてみると、欧州と中国で経済へのダメージが大きかったのはどちらだろうか。どれくらいの差があっただろうか。筆者の感触では、直近の下落を踏まえてもユーロは人民元に対してまだ高過ぎるように思える。

それは人民元に対するドルの下落をもう一度見れば実感しやすいのではないだろうか。ドルはコロナ前の水準から大幅に安くなっている。新型コロナウイルス被害において、欧州は米国と中国のどちらにより近いといえるだろうか。

今後の見通し

筆者はEUR/CNHに更なる下落余地があると見ている。特に株をネットで買い持ちにしている投資家にとっては、EUR/CNHの売りは新型コロナウイルス感染拡大に対するヘッジ手段として検討する価値があるのではないか。