米国の追加景気対策案を巡る不透明感が残る中で、バイデン氏勝利の見込みが強まるなど、米国政治の動向が市場を左右する日々が続いている。
そうした状況で方向感を欠いていた株式市場は上方向を目指すことを決めたようである。以下がS&P500指数のチャートである。

大統領選の勝者や上院を民主・共和のどちらが取るかなどは置いておいても、大統領選後の比較的早い段階で一定規模の財政支出があるだろうということは市場参加者の間の共通認識であるようだ。時間経過と共に株式投資家は徐々に強気に転じている。
筆者の相場観は一月前ほどの株価下落局面で書いた記事から概ね変化していない。
先行きのシナリオを3パターンに分けて考える。
1. 景気対策案のまとまりや、株価の下落自体が材料となり、株式市場が反発する。長期金利も再上昇する。
2. 株式市場から債券市場への資金移動が続く。株安は止まらず、金利は横ばいかやや下がる。
3. 更なる株安を受けてFRBが追加緩和を実施。株高と低金利が両立する。
筆者は現在の相場で株価の上げ下げに賭けるのは危険だという感触を持っている。それよりは長期金利の低下に賭けるほうが堅い勝負になるだろう。上記のシナリオの2と3では長期金利はこれ以上は上がらないし、シナリオ1は短期的にしか起こり得ず、上がった金利はまた株価の下落を起こすだろうからである。
上記のシナリオ1に近い結果となったと見ている。そして株式市場の反発に合わせるように長期金利が上昇し始めているから、金利低下に賭けるポジションをいつ取り始めるかを考えている。
緩やかに上昇する長期金利
以下が米国の10年金利のチャートである。徐々に水準が上がってきているようにも見える。

30年金利のほうはより顕著な動きになっている。

長期金利の上昇要因は複数考えられる。
- 国債市場から株式市場への資金移動
- 追加景気対策による国債需給悪化懸念
- 期待インフレ率の上昇傾向
したがって、追加景気対策案をテーマとする相場が続く限り、長期金利の上昇傾向もこのまま続く可能性が高い。
長期金利の上昇は株価に影響するか
しかし、長期金利の上昇には限界があると筆者は考えている。金利の上昇は実体経済にも株式市場にも悪影響となるため、中央銀行が金利をコントロールしようとするだろうからである。
FRBの立場としては、大統領選挙の結果や追加景気対策案の規模が確定するまで新たな動きは取りにくい。長期金利が多少上昇したところで、実体経済に直ちに影響が出ることはないので、主な懸念は金融市場の動向ということになる。現在のように株式市場が力強い値動きを続けるならば、長期金利の上昇も許容されるだろう。
考えなければならないのは、長期金利の上昇に株式市場がどこまで耐えられるかということである。ヒントとなるのはS&P500指数よりも金利上昇に脆弱と考えられる資産の値動きである。例えば、小型株中心のRussell2000指数や米国のハイイールド債ETFである。


長期金利がさらに上昇していったときに、米国大型株よりもこれらの資産に先に異常が起きると考えるならば、今のところその予兆はなさそうである。
今後の見通し
筆者は引き続き、株式市場の動向よりも長期金利の低下に賭けるほうが確度が高いと考えている。長期金利の上昇は徐々に進んでいるが、リスク資産の値動きを見る限りは株価への悪影響はまだ顕在化していないようである。そのため、金利低下ポジションを取るのはもう少し先になりそうである。