株安の原因は流動性不足か、米国債に妙味

マーケットが荒れてきた。S&P500は3日連続で値下がりし、8日の終値で高値から5%強の下落となっている。

ここまで指数を牽引してきた大型ハイテク株の下げが特にひどく、Nasdaqは高値から11%ほどの下落となっている。

起こるべくして起きた株安

3月の底値から一貫して上昇し続けてきたことを考えれば、この程度の調整はいつあってもおかしくはなかった。シグナルがなかったわけではなく、米国の長期金利は8月初旬で底打ちし、上昇に転じていた。

つまり、株式市場と債券市場の両方を支えるには流動性が不足していたのである。ここまでは株式市場が資金を集めていたが、急激な株価上昇と緩やかな金利上昇が続けばどこかで債券市場に資金が移る可能性は高かった。

本ブログでは8月半ばにこのことに言及していた。

長期金利の上昇が示す流動性不足、株価調整の可能性

株高の原因である低金利が0.2%ほど巻き戻されても株価は下落していない。6月の始めにも同じような局面があり、そのときは株価の調整があったが今回はどうなるだろうか。株高債券安の動きは株式市場と債券市場が資金の奪い合いをしているシグナルであり、市場の流動性が不足し始めている可能性がある。

流動性の供給が停止された状況で金利上昇が始まったのならば、株価を支えるためにはマネタリーベースが再び増加しなければならないかもしれない。ただし、FRBが一旦落ち着いた資金供給を再拡大するとしたら、それは金利の上昇が株価の下落を引き起こしたのを受けてからになるだろう。順序として、株価の調整が先ではないかということである。

そして株価の調整が起きたのである。ではFRBによる資金供給は現在どうなっているだろうか。

FRBのバランスシート規模もマネタリーベースも横ばいである。マネタリーベースのほうはやや増加しているようであるが、流動性不足を解消するにはこれでは足りないようである。

株安は止まるか

現在の株安の原因が流動性不足によるものだとすると、それを止めるためにはFRBによる資金供給の拡大が必要と考えられる。株価が十分に下落することで自律的に反発する可能性も当然あるだろうが、その場合にどこまで下がるかを予測するのは困難である。

FRBの立場としては金融緩和のみで経済と市場を支えることはできず、財政政策の支援を待っているのであるが、追加景気対策の協議は難航しており規模も時期も未定である。この状況で株安がさらに進んでしまえば、FRB単独で何らかの追加緩和をせざるを得なくなるかもしれない。

もう一度S&P500のチャートを掲載する。2020年で見れば株価はプラス圏にあるわけで、今の下落規模でFRBが何か対策に出ることはないだろう。

今後の見通し

先行きのシナリオを3パターンに分けて考える。

1. 景気対策案のまとまりや、株価の下落自体が材料となり、株式市場が反発する。長期金利も再上昇する。

2. 株式市場から債券市場への資金移動が続く。株安は止まらず、金利は横ばいかやや下がる。

3. 更なる株安を受けてFRBが追加緩和を実施。株高と低金利が両立する。

筆者は現在の相場で株価の上げ下げに賭けるのは危険だという感触を持っている。それよりは長期金利の低下に賭けるほうが堅い勝負になるだろう。上記のシナリオの2と3では長期金利はこれ以上は上がらないし、シナリオ1は短期的にしか起こり得ず、上がった金利はまた株価の下落を起こすだろうからである。

どこまで行っても株高の維持には低金利が必要であり、市場の楽観が低金利なしの株高を演じるならばそれは偽の株高である。今回のように遠からず市場は現実を見ることになる。したがって、今後の投資方針としては長期金利が上昇するたびに米国債(や社債)を買い増していくのがよいのではないか。